日本象牙秀作全集より
時とともに味わいの深さを増す象牙独特の光沢が、この党の形状に崇高な美しさを添える。 繊細な彫と確かさが、格調高い重厚な印象を与えている。
日本象牙彫刻秀作全集より
七福神のひとつ。弥勒(釈迦の弟子)の化身と言われた高僧で、世のために仏法を説き歩いたと伝えられ、 円満な風貌は寛容と平和の象徴である。なめらかな肌目は、いかにもやさしく暖かい。
「長寿を授ける」という縁起の良いもの。長い頭に杖を携え、うちわを持ち、鹿を連れているのが特徴である。 ふくよかな耳朶と豊かにたくわえられた白髯は、こころやすらぐ潤いをかんじさせる
薬師如来の右脇に侍する菩薩。均整のとれた容姿と端正な顔貌に象牙彫刻の精髄をみる。 静謐なたたずまいは、後光がさすかのよう
一切衆生を救済するためあらゆる姿になって現出すると説かれる観音菩薩。 浪に乗った清冽なその姿に大慈悲心を感じる。 静かな気品を漂わせる作品
観音の特質は慈悲である。が、一面二臂の人間の形をした聖観音はその美しさの点で類を見ない。 美の観音と言えば聖観音といわれるゆえんである。
六条御息所の光源氏を想う心は、生き料となって源氏の正妻・葵の上をとり殺すほど激しいものであったが、 その魂は自我から解かれ、源氏の恋人として、最後に対面した日にこの野宮に立ち戻ってくるという筋である。 愛の深淵をのぞかせ、妄執の輪廻を描く能の名作とされるこの作品を象牙彫刻美の粋とも言うべき技をもって 創造している
三島由紀夫の近代能で、玉三郎の好演により好評を博した。
作品は、吉田の少将と愛の誓いに取りかわした扇に思いをこめての舞姿。 扇を縁としての再会という狂言廻しのような役を見事に完成させている。
「翁面」は、能の先行芸能であった「翁」の専門面として他の能面より、はるかに早く 様式が確立されていた。今でも能の中野特別な演目として上演される「翁」の舞。 「天地人の拍子」を踏み、右手の扇を面にあて左そでを頭上に返す翁特有の型を 完璧なまでの様式美として定着させた作者渾身の力作。