問 16 「象牙の国内市場の閉鎖」が世界の潮流であり、象牙の合法的な市場を維持するべきという日本 の方針は、国際的な流れに反し、孤立しているのではないでしょうか?

  2016 年 11 月のワシントン条約第 17 回締約国会議及び 2019 年 8 月に行われたワシントン条約の第 18 回締約国会議では一部の国から「象牙の国内市場の閉鎖」を求める決議案が提出・審議されました。 いずれの会議においても国内市場の全面閉鎖については、多くの国から反対する意見が相次ぎ、採択 には至りませんでした。このように全面的な国内象牙市場の閉鎖については、ワシントン条約の締約 国会議においても、反対する国が多数であり、我が国が国際的な流れに反し、孤立している状態には ありません。

・ワシントン条約第 17 回締約国会議(2016 年 9 月 24 日~10 月 4 日:南アフリカ・ヨハネスブルグで 開催)において、米国及びケニアを始めとするアフリカ 10 か国から、国内取引市場の閉鎖を求める提 案がなされましたが、閉鎖を求める国内市場を密猟や象牙の違法取引に寄与している国内市場に限定 する修正を加え、全会一致で採択されました。

・ワシントン条約第 18 回締約国会議(2019 年 8 月 17 日~28 日:スイス・ジュネーブで開催)では、 再度、全ての国における象牙の国内市場の閉鎖を求める決議案(提案国:ブルキナファソ、コートジボ ワール、エチオピア、ガボン、ケニア、リベリア、ニジェール、ナイジェリア及びシリア https://cites.org/sites/default/files/eng/cop/18/doc/E-CoP18-069-05.pdf )が提出されました。

・本決議案について、ワシントン条約事務局は、ワシントン条約は国際取引を規制する条約であり、国内 規制に踏み込むことは条約のスコープを超える可能性があること等を指摘しつつ、本決議案を採択す る理由がないとの見解を会議文書に付して公表していました。

・本決議案は 2019 年 8 月 21 日午後のワシントン条約第 18 回締約国会議第 2 委員会の議題 69.5「国内 象牙市場の閉鎖に関する決議 10.10(COP17 で改正)」として審議されました。(※1) ・決議案を共同提案した国を含むアンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、ガボン、ガ ーナ、インド、イスラエル、リベリア、ニジェール及びナイジェリアから本決議案を採択すべきという 意見が表明されました。

・米国、ボツワナ、カンボジア、チリ、コンゴ民、エスワティニ、EU、日本、ナミビア、南アフリカ、 タイ及びジンバブエからは,採択に反対する意見が表明されました。これらの国から述べられた採択に 反対する主な理由は以下の通りです。

・決議 10.10 の改正が COP17 において全会一致で採択されて以降、状況に大きな変化はなく、まず は決議の実施に注力すべき。

・合法的な国内市場の存在が違法取引や密猟に寄与しているという証拠はない。

・国際取引を取り決めるワシントン条約が国内取引を規制するのは条約のスコープを超えているほ か、根拠なく各国の内政と主権に干渉する先例になりかねない。

・米国から、現行の規制(決議 10.10(COP17 で改正))を履行し、象牙市場を持つ国が違法取引や密猟 に寄与していないことを担保することが重要という観点から、“象牙及び象牙加工品の商業取引市場を 閉鎖していない締約国は、自国内市場が密猟や違法取引に関与していないことを徹底する取組を条約 事務局に報告し、さらに常設委員会で検討し、COP19 に報告・勧告する”と決定する、という内容の 提案がなされました。

・この米国の決定案に多くの国が賛同し、全会一致で採択され、すべての国の象牙の国内市場を閉鎖する 決議案は採択されませんでした。 ・以上のように、全面的な国内象牙市場の閉鎖については、ワシントン条約の締約国会議においても反対 する国が多数であり、我が国の考えが国際的な流れに反し、孤立しているというご懸念は当たりませ ん。

・いずれにせよ、日本の種の保存法による規制の真の目的は、現生や将来のアフリカゾウの保全であり (問 13 の回答参照)、種の存続に悪影響を及ぼさない水準の合法的な商取引による利益が種や生態系 の保全及び地元住民の発展に役立てることができることはワシントン条約の決議にもあるところです (問 14 の回答参照)。日本としては、そうした手法を採用して保全に取組む国々でアフリカゾウが安 定して生息しているという状況も踏まえつつ、引き続き、ゾウの保全のために国際社会として何ができ るのかを冷静に考えて対応します。

※1:COP18 における議題 69.5「象牙の国内市場閉鎖に関する決議案」の審議の詳細は、ワシントン条 約事務局が提供する第 18 回締約国会議の 8 月 21 日午後の第 2 委員会の議題 69.5 の議事概要をご覧 ください。 https://cites.org/sites/default/files/eng/cop/18/Com_II/SR/E-CoP18-Com-II-Rec-09-R1.pdf(英語)

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